――雨が降る。 音も無く、ただ静かに、ひっそりと、雨が降る。 木下で雨宿りしているというのに、頬に、手に、流れ落ちる、雫。 春の雨はまだ凍えそうな程、人肌には冷たかった。 そっと、身じろぎをする。 なぜか、居た堪れなかった……。 なぜか、遣る瀬無かった……。 ――どこかで誰かが泣いているかのような、そんな気がして……。 雨は、この不毛な大地を潤す――恵みをもたらすもの。 この未熟な世界を育む――必要不可欠なもの。 流石に、降り過ぎては水害が起きたりするので一概に良いものだとは言い切れないが。 だというのに……。 泣いている? ――涙? どうしてそんなふうに思ったのだろうか。 自然と自嘲気味た笑みが口元に浮かぶ。 その気配を敏感にも感じ取ったのか、傍らで腰を下ろしている、今では唯一の同行者である青年が、不思議そうに尋ねてきた。 「どうした、ラス?」 ……とにかく、困った。 自分でもよくわからないのだから、答えようがない。 しかし、何か返答しなければ、目の前にいる男が臍を曲げることは、容易に想像ができた。 だから、答えた。黙っているよりは――格段に、とまではいかないが――良いと考えたから。 「どこかで誰かが泣いているかのような……!」 不意に、自分の両目を塞ぐかのように闇主の手がのびてきて、驚きのあまり一瞬声を失う。 文句の声を上げる前に――先手必勝とばかりに――男が先に口を開いた。 「お前が泣いてるんじゃないかと……」 ――思った。 囁くような吐息で告げられた内容に、彼の自分への気遣いが痛いほど伝わってきて、どうしょうもなく、泣きたい衝動に駆られた。 けれど、唇を噛みしめて我慢する。 泣けば、この自分勝手でわがままな男に苦い思いをさせてしまうと思ったから。 その男は、ラエスリールの苦労も知らず――いや、わかって、やっているのだろう――、聞こえよがしに、ため息を付いた。 「無理に我慢するな。余計、見ていて痛々しいぞ?」 泣きたいときは泣け。 なぜか、そう聞こえた。 泣きたいときは、泣く。自分に、正直に。 この男は、いつだって、自分自身に対して正直だ。多少、どころか随分行き過ぎているとは思うが。 この男にも、少しくらいは見習ってもいいところがあるのだな、とラエスリールは少しだけ感心した。 少しだけ、褒めてやりたい気分になった。口には出さないけれど。 口に出したら最後、調子に乗って、付けあがるに決まっているのだから。 だから、絶対、言わない。絶対に、だ。言ってなるものか。 と、ラエスリールは固く心に刻んだ。 自分の思ったことを言わない、というこたは正直であることから思いっきり、かけ離れた行動なわけなのだが、いかんせん本人は気付いていない。 正直にいようと思っても、即座に実行出来ないところが、ラエスリールの不器用さを顕著にあらわしていた。 ただ、ラエスリールは目頭が熱くなったのを感じた。 ――誰に対するものなのか、何に対するものなのか、わからないまま、ラエスリールは頬を濡らした。 ※ いつのまにか、雨は止んでいた。 空を見上げると、雨が降っていたせいなのか、涙を流したせいなのか、月がにじんで見えた。 月が、泣いていたのだろうか。 ふと、なんとなくラエスリールはそう思った。 ただ、自然と、そう、思えた――。 ★あとがき。 かなり突発的に書いたもの。だから、ありきたり〜。 1日で書き上げました。起承転結なんか、くそくらえ状態! ラヴラヴで甘々な二人が書きたかったわけではナイハズ…なんだけどなぁ。 2003.02/11 |
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